ビジネスとIT活用に役立つブログBlog


【経営者の視点】大企業と中小企業の賞与(ボーナス)がなぜこんなに違うのかを収益力で考える

この記事をシェアする:

12月は、会社で働く人の多くが楽しみにしている賞与(ボーナス)の支給時期ですね。
当社は、決算月の関係で支給月が3月と9月なのですが、日本では、多くの会社が12月を冬の賞与支給月にしているものと思います。
賞与の支給を前に、例年この時期に発表されるのが、経団連(日本経済団体連合会)の「年末賞与・一時金 大手企業業種別妥結状況」です。

参考:春季労使交渉/賞与・一時金 妥結状況(一般社団法人 日本経済団体連合会)

今年は、11月16日に発表され、各ニュースメディアで報じられましたが、それによると、2018年は、95万円6,744円となり、前年に比べて3.49%増えたとのことでした。
好調な企業業績を反映して2年ぶりに前年を上回り、過去最高となったそうです。

ちなみに、

2017年は、92万4,438円
2016年は、92万7,420円 でした。

毎年のことではありますが、びっくりです。

確かに、ホンダに勤める私の親戚は、100万を超える賞与をもらっているそうなので、その通りなのでしょう。
ただ、世間一般の感覚からすると、信じられないような額ですし、以前私が勤めていた会社(東証一部上場)でも、それには遠く及ばない額でした。
そもそも中小企業では、賞与などないという会社も少なくないはずです。

それなのに、なぜこんな額になるのだろうか。昔から疑問に感じていたのですが、今回いろいろと調べてみると、その背景が分かってきました。

95万円は、ごく少数の大企業の平均

まず、そもそも、この集計の対象になっている会社がごく一握りの大企業であるということ。

経団連の発表資料を見ると、東証一部上場の中でも従業員数など一定以上の条件を満たした会社に対して行った調査に対し、妥結額の回答のあった会社の賞与平均額を発表しているということが分かります。

では、その回答があった会社が何社かというと、わずかに75社なのです。
(正確には、109社で妥結しているが、このうち34社は平均額不明などのため集計より除外されている)

平均とはいいながら、日本を代表する大企業のうちでも、たった75社だけの平均です。
日本には、第一部に上場している会社だけでも 2,119社。すべての部を合わせると3,640社(2018年11月28日現在)ありますので、上場企業の中でも、2%に過ぎません。
さらには、日本国内の法人は、264万1,848社(平成27年度分 国税庁調査)ありますので、95万円の75社は、その中のごく一部の企業の平均なのです。

また、発表資料を見ると電機や自動車、重化学工業などの製造業が多いこともわかります。
当然それらの産業は従業員の平均年齢も高いですから、その分賞与の平均額も高くなるという側面もあるのでしょう。

実際の賞与の平均額は?

さて一方で、同じ時期にあった発表に、一般的な感覚に合ったニュースもありました。

大阪の信用金庫、大阪シティ信用金庫(大阪市中央区北浜)の調査発表(11月27日発表)です。
調査は大阪府内の同信金取引先企業を対象に実施し、家族経営を除く1,048社からの回答を集計したものだそうです。

参考:大阪シティ総合研究所 調査レポート(大阪シティ信用金庫)

それによると、

ボーナスを支給すると回答した企業は、全体のうち60.8%で、前年冬に比べ 3.1 ポイント 増加。
支給すると回答した企業の支給予定額は、 27万6,486円で、前年冬に比べ 1万2,657円減少した。

とのことでした。

27万6,486円は、あくまでもボーナス支給を予定する企業の平均であり、支給をしない企業(発表によると、39.2%の企業が支給しない)も含めるとさらに低い額になります。
ただ、日本の中小企業の割合は、99.7%(2017年版中小企業白書- 中小企業庁)ですから、こちらの方が実態に即した数字だと言えるでしょう。

なぜこんなにもの違いが生まれるのか

95万円と27万円とでは、3.5倍もの違いがあるのですが、なぜそんなにもの違いが生まれてしまうのでしょうか。

簡単に言えば「収益力」の違いです。
給与や賞与の原資となるものは、売上の対価として顧客から受け取るお金です。そこから各種の支払い、つまり人件費以外の経費を引いた残りから分配されます。
ですから収益力、つまり収入(売上)と利益が大きければ、それだけ多く給与や賞与に回すことができます。
95万円という賞与の額は、一人あたりの金額ですから、一人あたりの収益力が高いことが大切です。

トヨタ自動車株式会社の例で見る

今回の経団連の発表に含まれると想定される、トヨタ(トヨタ自動車株式会社)を例に考えてみましょう。

トヨタの、2018年3月期の、連結売上高は 29,379,510百万円、税引前当期純利益は 2,620,429百万円でした。それに対して、従業員数(連結)は 369,124人(2018年3月末現在)ですから、一人あたりに換算した収益力は以下の通りとなります。

一人あたり売上 7,959万円
一人あたり税引前当期純利益 710万円

これを、時間単価に換算(月160時間稼働で計算)すると以下の通りとなります。

一人の時間あたり売上 41,454円
一人の時間あたり税引前当期純利益 3,697円

なんと、1時間に4万円以上も売り上げています。

中小企業の平均は、1時間に4千円~1万円といったところでしょうから、数倍から10倍もの違いがあります。
中小企業の中には時間あたりの売上が、トヨタの時間あたり税引前当期純利益にも届かないという会社もあるのではないでしょうか。

一人あたりの収益力こそが、高い賞与の源泉になっていることは間違いないでしょう。

なぜ大企業は収益力が高いのか

では、なぜ大企業は収益力が高いのでしょうか。
私は、4つの要因があると考えます

  1. 規模のスケールメリット
  2. 歴史を積み重ねて鍛えられた仕組み
  3. ブランド
  4. 優秀な人材

1.規模のスケールメリット

大企業は、あたりまえですが規模の大きな会社です。
前述のトヨタは、売上29兆円、従業員37万人という規模です。大企業は、規模を生かしたスケールメリットを得ることができます。
例えば、同じ部品を中小企業が100個仕入れる場合と、大企業が10万個仕入れる場合とでは、仕入れ単価は大きく違うでしょう。
また世界中に展開していることにより、為替を考えたり、より安い地域から調達したりすることも可能です。当然、コストを抑えられることによって、製品あたりの利益は大きくなります。

また、前述のトヨタであれば、ご存じの通り全国のいたるところに販売店を持っています。
大都市にしか販売店のない会社と比べて、どれだけ売りやすいか(顧客にとってはどれだけ買いやすいか)は明確です。

そもそも資本主義の世の中では、大きな資本を持っていることが強みになります。
投資をする際、10万円の投資と10億円の投資では、同じ率のリターンであっても、その額は桁違いです。企業活動とは資本の再投資の繰り返しであるわけですので、資本の大きさは収益の大きさに直結します。
資本が形を変えた資産についても同様のことが言えます。

2.歴史を積み重ねて鍛えられた仕組み

大企業の多くは、長年の歴史を積み重ねてきています。当然、景気の良いときも悪いときも経験してきています。
それらの経験に基づいて改善を積み重ね、ブラッシュアップしてきた経営の仕組みは、大きな財産です。
また、大量かつ長い時間によって培われてきた技術力も財産になります。
規模が大きければ、その経験の量も多いわけですから、それによって磨き上げられてきた仕組みや技術力は、収益力に直結していると思います。

3.ブランド

経団連の発表資料には、対象企業の社名はありませんでしたが、多分だれもが知っているような企業ばかりであることは間違いないでしょう。

例えば、ラジオを買う場合に、聞いたことのないメーカーとSONYのラジオがあった場合、無名メーカーのラジオが1,000円に対して、SONYのラジオが2,000円というような値付けがされていても、多くの人は納得できるように思いますし、実際に店頭で見てもその程度かそれ以上の価格差があるのが実態でしょう。
どちらも製造原価が500円であったとしたら、無名メーカーは500円、SONYは1,500円と、3倍の粗利を得られることになります。販売価格の差は2倍なのに、です。

もちろん、粗利がそのまま賞与になるわけではありませんが、無名メーカーに比べてSONYの賞与が3倍であっても不思議はないように思います。

ではなぜ、SONYのラジオが倍の値段で売ることができるかといえば、それはブランドの力であると言えるでしょう。
ブランドとはつまり、信頼や安心を保証するものであり、その製品を購入し、使うことで得られる見栄や心地よさを満足させるものです。

これは一般消費者向けの小売り製品だけでなく、B to Bの製品やサービスであっても、ブランドがあれば、新規参入もしやすいでしょうし、高い値段で販売することもできるでしょう。

4.優秀な人材

「企業は人なり」とはよく言われることですが、大企業には優秀な人材が多いことも、高い収益力の理由でしょう。
人手不足に悩む中小企業を尻目に、大企業には多くの就職希望者が殺到します。
その中でも特に優秀だと思われる人を採用していくわけですから、強くなって当然だとも言えます。

「勝ってますます強くなる」という孫子の言葉がありますが、大企業は、強い収益力によって高い給与や賞与を支給でき、それによりまた、優秀な人材を採用し、収益力をさらに高める、という良い循環が出来ています。

大企業なみの賞与を手にするためには

規模も歴史もブランドも無い中小企業が、大企業なみの賞与を支給出来るようになるためにはどうしたらよいのでしょうか。当然ですが、規模も歴史もブランドも短期間で培うことが出来るものではありません。
しかしただ一つ、人材を活かすという点については、中小企業でもなんとか出来るところではないでしょうか。

確かに大企業に勤める方たちには、優秀な人が多いと思います。しかし人間の能力の差が、賞与のように3.5倍もあるとは思いませんし、能力が高くてもやる気がない人に比べたら、多少能力が劣っても、やる気に満ちた人の方が、高いパフォーマンスを発揮出来るはずです。
人の活用こそが、中小企業が大企業のような賞与を支給出来るようになるための一つのポイントだと思います。

これは経営者自身が能力を伸ばし、最大限に発揮することも含みます。
その上で経営者は、常に事業と経営の仕組みをブラッシュアップし続けていくことが大切です。

もちろん、時間はかかるとしても大企業になることを目指すという方法もあります。

The following two tabs change content below.
池谷義紀

池谷義紀

株式会社アーティス 代表取締役
1998年アーティスを設立し、インターネット通信販売をはじめとした数々のウェブサイト構築を手がける。ユーザビリティという言葉自体が耳慣れなかった頃よりその可能性に着目。理論や研究だけでなく、実際の構築と運営という現場で積み重ねてきた実績がクライアントの信頼を集めている。
この記事のカテゴリ:

SNSで最新の情報を
受け取ることができます!