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webサイト制作見積りはなぜ会社によってこんなに違うの? その理由を制作費用算出の裏側から教えます


webサイトの制作を依頼するときに気になるのは「どの程度費用がかかるのだろうか」というところだと思います。
ところが、実際に見積もり依頼をしてみたところ、web制作会社によって倍以上の開きが出てしまい「なんでこんなに違うの?」と悩んでしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか?

なぜ制作会社によって費用が異なるのか、実際にweb制作を行っている会社だからこそわかる、その仕組みと理由を詳しく解説します。

また差のある見積もりの中からどんな業者を選ぶべきなのかもご紹介します。

webサイト制作費用の大部分は人件費

まず、webサイトの制作費用はどのように算出されているのかをお話します。

モノやサービスには必ず原価がありますが、もちろんwebサイトにも存在します。
その大半を占めているのが、webサイト制作に関わるスタッフの人件費です。

webサイトを制作する場合は、企画提案や進行管理を行うディレクター、デザインやコーディングを行うデザイナーコーダー、システム設計や開発を行うシステムエンジニアプログラマなど多くのスタッフでプロジェクトチームを組みます。
サイトに使われる素材である写真やイラスト、図、文章などにもカメラマンイラストレーターライター、場合によっては翻訳者といった人件費が掛かってきます。
また、web制作会社によっては、工数管理やプロジェクト費用管理を専任で行う担当者がいる場合もありますし、そもそも多くの会社では、顧客との折衝を行う営業担当者がいます。プロデューサーという職を置いている会社もあります。

写真やイラストなどを、既にある素材集や販売サイトなどから購入することもありますが、その場合であっても全体の費用に占める割合はごく僅かにしか過ぎません。

つまり、webサイトの制作原価は、そのほとんどを人件費が占めており、簡単に言えば、誰が、何時間働くのかで、その原価の額は決まると言えます。

webサイト制作会社は、典型的な労働集約型産業なのです。

時間単価の算出方法

上の図で例にあげたように、制作原価の人件費は、職種ごとの時間単価と想定時間との乗算で求められます。
通常1時間あたりの単価は、職種によって異なるものの、数千円から1万数千円といったところが多いと思います。
分野は違うものの、弁護士も相談料などについてはタイムチャージ制をとっている場合が多く、1時間あたり1万円から数万円が相場です。
高度な知識と専門性を要する有資格者の弁護士に比べると、web制作の現場は安い相場ではありますが「まあそれくらいかなぁ」と思える価格ではないかと思います。

では、そもそも時間単価はどのように算出されているのでしょうか。気になるところですね。

簡単に言えば、時間単価は給与をベースに算出されていると言えます。
ただ、仮に20万円の月給の人が月に160時間働くとして、時間あたり1,250円(20万円÷160時間=1,250円)になるかというとそう単純ではありません。
実際には、月給20万円のスタッフの年収は、単純に20万円×12ヶ月の240万円ではなく、それに賞与60万円(給与の1.5ヶ月分×2回で想定した場合)や各種手当て、年金や健康保険など社会保険料の会社負担分(手当と合わせて20%で想定)を加えると、360万円になります。
月当りにすると30万円。月間労働時間が160時間だとすると、時間1,875円となります。

実は人件費以外の費用もかかってくる

ただ、これは制作会社が支給や納付する実費だけですので、その他に会社にかかるさまざまな費用は含まれていません。

会社であれば、直接はプロジェクトに関わらない総務や経理など管理部門の担当者もいますし、オフィスの家賃、光熱費、通信費、交通費、パソコンをはじめとした設備の購入費や減価償却費等々がかかります。
また、webデザインなどで使うクリエイティブ系のソフトウェアはオフィス系のソフトを比べて値段が高く、ちょっとした規模の会社であれば、年間で100万円以上は支払っているはずです。
もちろん営利企業である以上、適正な利潤を得る必要がありますから、その分も時間単価には追加されてきます。

さらに考えなければならないのは、たとえ制作の専任職であっても、付加価値の産出や、売上につながらない時間があるということです。
例えば、調べごとや打ち合わせ、後輩への教育、指導などは付加価値の産出にはつながりませんし、コンペで失注した場合は、コンペの準備に何十時間かけていても売上にはなりません。

給与の3倍が時間単価になる?

これらの費用を含めて考えると、むかしからよく言われる「給与の3倍稼いで一人前」という言葉が的を射ていることを実感します。
これは月間に生み出す付加価値を給与の3倍にしなければならないという考え方です。

つまり、月給が20万円なら賞与分も含めた25万円(賞与を年3ヶ月分で計算)の3倍で、月間75万円、時間4,690円の付加価値を産み出してもらう必要があるということです。月給25万円なら時間5,860円、月給30万円なら時間7,030円です。
多くの会社の時間単価はこのような計算で算出されているように思います。

この給与の3倍の付加価値というのは、本来は適正とされる労働分配率から逆算されているもののようですが、実際にweb制作会社として20年以上やってきた弊社の経験からも、実態に合った数字であると言えます。

webサイト制作費用が異なる理由

ではなぜ制作費用が制作会社によって違ってくるのでしょうか。
費用の大方が(間接費用を含む)人件費であることが分かれば、その理由も分かりますね。

つまり、時間単価×作業時間の担当者ごとの積み上げが制作費になるのであれば、時間単価作業時間の違いが制作費用の違いになるわけです。

1.人件費の時間単価が違う

未経験の新卒社員と10年以上の経験を持つベテランでは、給与の額が違ってくるのは当たり前です。ですから、同じ職種であっても誰が担当するのかによって時間単価が大きく変わってくるのです。
その差は同じ会社の中でも発生しますが、多くの会社では、経験を積むことで、アシスタントディレクターがディレクターに昇格したり、プログラマがシステムエンジニアになったりと、職種(肩書き)が変わっていくものですから、同職種の差はそれほどまで違うことはありませんが、会社そのものが異なればその差は大きくなります。

つまり、社歴が浅く社員の年齢も若い会社であれば、比較的給与は廉価になるでしょうし、ベテラン社員の多い会社であれば、給与水準が高くなるのは当然です。
この場合の差は、1.5倍や2倍になることも珍しいことではありません。

2.想定している作業時間が違う

仮に時間単価が同じであったとしても、想定している作業時間が違えば、見積もりが異なってくるのも当然です。サイトの制作にあたってどのような方法や手順で行うのか、どこまでの範囲を行うのかによって大きく変わってきます。

たとえば、制作会社によっては、現状分析を行い、結果を出すためのサイトはどうあるべきなのかという企画立案からを作業範囲だと受け止める会社もありますし、複数のデザインを作成しABテストを行ったりする会社もある一方、単に決められた通りのwebサイトを作るだけ、という会社もあります。
当然、どこまでやるかによって作業時間は大きく異なります。

また、作業時間は、どのような方法で行うかによっても変わってきます。
たとえば、デザインの作成をテンプレート化されたものから選ぶのと、一から作るのでは大きく違いますし、最近主流となっているCMS(コンテンツマネジメントシステム)による構築でなく、1ページごとにコーディングする方法をとれば、数倍の時間を要することになります。

webサイト制作費用が異なるそれ以外の理由

原価としての人件費以外でも制作費用が変わってくることがあります。

簡単に言えば、制作会社ごとの事情や思惑などです。

たとえば、失注したコンペに費やした時間は売上にならないことを前述しましたが、コンペの勝率が低い会社では、その損失を埋めるために「他の仕事を高くとろう」という判断や、逆にこれ以上の損失を出さないために「安く出そう」という価格勝負にでるという判断もあるわけです。
実際に価格のみで制作業者を決める入札などでは、他の業者に比べて極端に低い価格で応札してくる会社があるのを何度も経験しています。制作ボリュームから考えるに赤字にしかならない価格ですが、赤字であってもゼロよりもましという判断か、あるいはネームバリューのある案件を制作実績に入れたいという意図が働いているものと思います。

見積もりをわかりにくくさせる「値引き」の存在

会社によっては、見積書の最後の方に、「特別値引き」とか「出精値引き」などという名称で、見積合計から値引きをする項目を記載するケースもあります。
出精(しゅっせい)とは、このような場面でないと耳にすることの無い言葉ですが、精を出して努めるという意味ですので、要は「できる限り頑張りました」とか「これ以上は出来ません」というニュアンスになります。

費用が安くなるのはありがたいことですが、この「値引き」の存在が見積もりをさらにわかりにくくさせているのも事実です。

テレビ通販などでは「さらに今回だけ割引」とか「いまから30分だけ割引」などのアナウンスで特に顕著ですが、この値引きとか割引といった方法は、お得感のアピールであると冷静に受け止めるのが良いと思います。
「購入数量の増加による値引き」や「長期間利用による値引き」「在庫処分の値引き」ということであれば、経済的な合理性もありますが、webサイトの構築の値引きについては、前述したような会社ごとの特別な事情が無い限り、単に元の値段に割引額が加算されていたのだと受け止めるのが良いと思います。

作業内容で見積もりを算出するケース

制作会社によっては、作業の項目や内容別の見積もりを出してくるケースも多いと思います。つまり、トップーページデザイン20万円、下層ページデザイン7万円×○ページ、ページコーディング2,500円×○○ページ・・・といったように作業項目ごとに出す方法です。

会社によって、作業時間での見積もりで出すところもある一方、作業内容での見積もりを出す会社もあるというように、見積もりのフォーマットが異なることも、見積もりが適正かどうかをわかりにくくさせている理由だと思います。
しかし、作業内容での見積もりであっても結局は人件費の積み上げでの計算であることには変わりありません。

コーディングするページが○○ページあるのであれば、コーダー2人で○○時間ずつかかるだろうな、という計算によって出された人件費が作業ごとに振り替えられているだけですので想定される人件費をベースにして見積もりが算出されていることには変わりはないのです。

正しい制作費用の見積もりに必要なこと

そうは言っても制作を依頼する立場からすれば、適正な見積もりを出してきた業者の中から選びたいと思うのは当然です。
そのために必要なのが、要件や仕様を明確にして、できる限り同じ条件での見積もりを出してもらうように依頼することです。

つまり

  • 現状分析の有り無し
  • 企画提案を含むかどうか
  • サイトデザインの方向性
  • 制作するページ数
  • CMS導入の有無、導入範囲、必須機能
  • スマートフォンやタブレットへの対応方法
  • 文章や画像などの素材提供有無
  • 公開後の保守内容
  • システム開発の有無、仕様及び必須機能
  • webサイトやシステムのサーバ環境仕様

などです。

要件が明確になればなるほど作業範囲も明確になりますので、必要とされる時間の見積もりも各社とも同じ条件でできるようになります。

大きい会社ほど見積もりも高くなる?

制作会社の規模と見積もりとの関係はどうでしょうか。
確かに、規模が大きい会社ほど見積もりも高くなるという傾向はあるように思います。

いきなり大きな会社が生まれることはないわけですので大きい会社は、その分社歴も長いものです。たくさんの経験を積むことで高い能力を有している一方で、スタッフの年齢層も高くなりますので、当然給与水準も高めになります。
また管理部門の費用や人件費などもかかってくることを考えれば、個人や数人でwebサイト制作を行っているのに比べて費用が高くなってくるのは致し方ないことだと思います。

そこで、費用だけで制作会社を選定するのであれば、個人や規模の小さな制作会社の方がよいということになりますが、一方でリスクも認識しておく必要があります。
個人または数人規模のWebサイト制作会社の場合、「サイト制作をやめることになった」「突然連絡が取れなくなった」あるいは「担当者が辞めてしまい、これまでの経緯を誰も把握していない」といったトラブルが発生することがあり、当社に困り果てて連絡をいただいたというケースを実際に何度も経験していますので、その点は注意が必要だと思います。

失敗しない制作業者の選び方

できるだけ同じ条件のもとで見積もりを出してもらったとしても、やはり各社ごとの違いは出てくるでしょう。条件を揃えているので適正な数値での見積もりにはなっているはずですが、それでも時には冒頭に書いたような倍近く違うというケースがあるかも知れません。

では、どうやって委託する会社を選べばよいのでしょうか。

結論から言えば、見積もりの高い、安い、だけではない別の視点で選ぶべきです。
条件を揃えた結果としての見積もりであれば、高ければ高いなりの、安ければ安いなりの理由や背景があるはずです。ですから理由が無いのに、あまりにも高い、あるいは安い見積もりを出してくる会社は避けるべきかと思います。
そのサイト制作にかけられる予算、あるいは予定していた予算というものがあるはずでしょうから、その範囲内で最も良いと考えられる会社を選べば良いのです。

では、よい制作会社とはどんな会社でしょう。

一つは、制作するWebサイトが果たすべき目的や成果を十分に理解し、それを成し遂げてくれると思われる会社です。
欲しいものは、サイトそのものではなく、そのサイトが与えてくれる結果なのですから。
そのためには、それが出来る実力を持ち、実績等でそれを証明できる会社を選ぶことです。

そしてもう一つは、親身になって丁寧かつ確実なやり取りで制作やその後のフォローを進めてくれる会社です。Webサイトの制作には、クライアントと制作会社とのやり取りが数多く必要となります。また、Webサイトは完成した時がゴールではなく、スタートです。
制作会社とはサイト公開後も長く付き合っていくことになりますので、納得して制作や運用を任せられるよう十分に検討して選定しましょう。

Webサイトの制作と運用には、少なくは無い費用を投資することになります。
その費用がどうしてかかるのか、その理由や背景を理解し、適正な見積もりがわかるようになること、そして自社のパートナーとしてふさわしく、結果を出してくれる制作会社を見抜く上で本記事が参考になれば幸いです。

この記事を書いた人

鈴木 良直
鈴木 良直ソリューション事業部 部長
大学卒業後、バンド活動を経て2003年にアーティスへ入社。
営業兼コンサルタントとして、これまで携わってきたWebサイトは500サイト以上、担当したクライアント数は300社以上にのぼる。
現在は、豊富な経験を活かした提案を行いながら、ソリューション事業部 部長として事業戦略の勘案や後進育成にも取り組んでいる。
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