グローバルナビゲーションへ

本文へ

フッターへ

お役立ち情報Blog



ウェブアクセシビリティ規格「JIS X 8341-3:2016」について理解しよう

2016年4月に施行された「障害者差別解消法」により、公的機関のみならず多くのWebサイトでもウェブアクセシビリティの確保や向上が必要とされています。
ウェブアクセシビリティへの取り組みを行う上で欠かせないのが、ウェブアクセシビリティ規格「JIS X 8341-3:2016」です。

今回は「JIS X 8341-3:2016」について、最低限知っておくべきことを解説していきます。

JIS X 8341とは?

そもそもJIS X 8341は、日本工業標準調査会(JISC)が制定した、情報通信における機器、ソフトウェアおよびサービスの情報アクセシビリティを確保・向上するために、企画・開発・設計者および経営者が配慮すべき具体的な要件がまとめられた標準規格です。

情報アクセシビリティとは高齢者・障がい者等が、情報通信における機器、ソフトウェアおよびこれらによって実現されるサービスを支障なく操作または利用できるよう配慮することを意味しています。

規格番号の”8341”は「やさしい」の語呂合わせからきています。

JIS X 8341-3(第3部:ウェブコンテンツ)とは?

このJIS X 8341の個別規格として2004年に公示されたのが「JIS X 8341-3(正式名称:高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ)」です。

JIS X 8341-3では、高齢者や障害のある人を含む全ての利用者が、使用している端末、ウェブブラウザ、支援技術などに関係なく、ウェブコンテンツを利用することができるようにするための基準が定められています。

この規格でいう「ウェブコンテンツ」は、ブラウザや支援技術などのユーザエージェントを介して利用者に提供されるあらゆるコンテンツを指し、次のようなものが対象とされます。


  • ウェブサイト
  • ウェブアプリケーション
  • ウェブシステム
  • 携帯端末などを用いて利用されるコンテンツ
  • イントラネットの業務用システム
  • 電子マニュアル
  • CD-ROM などの記録媒体を介して配布される電子文書

JIS X 8341-3 改正の経緯

JIS X 8341は、2004年の初版からこれまでに2度の改正を経て、現在は「JIS X 8341-3:2016」として公示されています。

JIS X 8341-3:2004(2004年6月)

国内外の既存ガイドラインなどを参考に、日本語特有と思われる事項も網羅した独自の指針です。

JIS X 8341-3:2010(2010年8月)

2008年12月11日にウェブの標準仕様を定めるW3C(World Wide Web Consortium)が、Webコンテンツのアクセシビリティに関するガイドライン「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)2.0 」をW3C勧告 ※1 として発表しました。

この国際的な動きを受け、WCAG 2.0を包含する形でJIS X 8341-3が初めて改正され、「JIS X 8341-3:2010」として2008年12月に公示されました。初版の公示からから約6年ぶりの改正となりました。

参考:JISX8341-3:2010の公示(JIS X8341-3:2010の主な特徴)

※1 W3C勧告
HTML/CSS/JavaScriptといったWeb技術の仕様や指針を標準化するための国際的ルールを決めている非営利団体「W3C」が、技術文書を作成するプロセスにおける最終段階で用いる表現です。その技術文書がW3Cによって承認され、内容が一度確定したことを意味します。一般的な表現を使うと「正式版のリリース」です。

JIS X 8341-3:2016(2016年3月)

2012年10月に、W3C勧告の「WCAG2.0」がそのままISO/IEC ※2 国際規格「ISO/IEC 40500:2012」として承認されました。

これを受け、国際規格となった「ISO/IEC 40500:2012」の一致規格とすべく改正され、「JIS X 8341-3:2016」が2016年3月に公示されました。つまり、JIS規格(IS X 8341-3:2016)と国際規格(ISO/IEC 40500:2012)は、いずれもW3Cのガイドライン(WCAG2.0)と同じ内容となります。

ウェブアクセシビリティ基盤委員会より

※2 ISO/IEC
各国の代表的標準化機関から成る国際標準化機関です。ISO(国際標準化機構)は機械、管理など電気/電子以外の国際標準化を実施し、IEC(国際電気標準会議)は電気/電子技術分野の国際標準化を実施しています。

JIS X 8341-3:2016 改正のポイント

JIS X 8341-3:2016の改正では、旧規格(JIS X 8341-3:2010)から各達成基準の要求事項に変更はありません。
WCAG2.0(=ISO/IEC 40500:2012)との一致規格であることから、原文にできるだけ忠実な日本語訳とすることを目的として、主に文章の構成や用語(日本語訳)が変更されています。

  • 規格本文は、対応国際規格『ISO/IEC 40500:2012』(W3C勧告『WCAG 2.0』)と一致した内容になった。
  • 用語や各達成基準の文言を、『JIS X 8341-3:2010』(以下、「旧規格」)よりもW3C勧告『WCAG 2.0』の原文(英語)により忠実な日本語訳とした。
  • 旧規格の「箇条6 ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件」と「箇条8 試験方法」にあった旧規格独自の要求事項は、それぞれ内容を見直した上で「附属書(参考)JA」、「附属書(参考)JB」となった。
ウェブアクセシビリティ基盤委員会ウェブサイトより

JIS X 8341-3:2016 達成基準について

JIS X 8341-3: 2016では、レベルA、レベルAA、レベルAAAの3つの適合レベル(JIS X 8341-3:2010では、達成等級という名称)があり、各適合レベルにおいて、満たすべき達成基準が定められています。

達成基準とは、ページの作成において対応すべき個別の要件を規定したもので、レベルAは25項目、レベルAAは13項目、レベルAAAは23項目の合計61項目あります。

(参考)JIS X 8341-3:2016適合レベル別達成基準の一覧

※各達成基準の内容は、下記よりJIS X 8341-3:2016を参照してください。

日本工業標準調査会:データベース検索-JIS検索(※「JISX8341-3」で検索)
レベルA
(25項目)
1.1.1 非テキストコンテンツの達成基準
1.2.1 音声だけ及び映像だけ(収録済み)の達成基準
1.2.2 キャプション(収録済み)の達成基準
1.2.3 音声解説又はメディアに対する代替コンテンツ(収録済み)の達成基準
1.3.1 情報及び関係性の達成基準
1.3.2 意味のある順序の達成基準
1.3.3 感覚的な特徴の達成基準
1.4.1 色の使用の達成基準
1.4.2 音声の制御の達成基準
2.1.1 キーボードの達成基準
2.1.2 キーボードトラップなしの達成基準
2.2.1 タイミング調整可能の達成基準
2.2.2 一時停止,停止及び非表示の達成基準
2.3.1 3 回のせん(閃)光,又はしきい(閾)値以下の達成基準
2.4.1 ブロックスキップの達成基準
2.4.2 ページタイトルの達成基準
2.4.3 フォーカス順序の達成基準
2.4.4 リンクの目的(コンテキスト内)の達成基準
3.1.1 ページの言語の達成基準
3.2.1 フォーカス時の達成基準
3.2.2 入力時の達成基準
3.3.1 エラーの特定の達成基準
3.3.2 ラベル又は説明の達成基準
4.1.1 構文解析の達成基準
4.1.2 名前(name),役割(role)及び値(value)の達成基準
レベルAA
(13項目)
1.2.4 キャプション(ライブ)の達成基準
1.2.5 音声解説(収録済み)の達成基準
1.4.3 コントラスト(最低限レベル)の達成基準
1.4.4 テキストのサイズ変更の達成基準
1.4.5 文字画像の達成基準
2.4.5 複数の手段の達成基準
2.4.6 見出し及びラベルの達成基準
2.4.7 フォーカスの可視化の達成基準
3.1.2 一部分の言語の達成基準
3.2.3 一貫したナビゲーションの達成基準
3.2.4 一貫した識別性の達成基準
3.3.3 エラー修正の提案の達成基準
3.3.4 エラー回避(法的,金融及びデータ)の達成基準
レベルAAA
(23項目)
1.2.6 手話(収録済み)の達成基準
1.2.7 拡張音声解説(収録済み)の達成基準
1.2.8 メディアに対する代替コンテンツ(収録済み)の達成基準
1.2.9 音声だけ(ライブ)の達成基準
1.4.6 コントラスト(高度レベル)の達成基準
1.4.7 小さな背景音,又は背景音なしの達成基準
1.4.8 視覚的提示の達成基準
1.4.9 文字画像(例外なし)の達成基準
2.1.3 キーボード(例外なし)の達成基準
2.2.3 タイミング非依存の達成基準
2.2.4 割込みの達成基準
2.2.5 再認証の達成基準
2.3.2 3回のせん(閃)光の達成基準
2.4.8 現在位置の達成基準
2.4.9 リンクの目的(リンクだけ)の達成基準
2.4.10 セクション見出しの達成基準
3.1.3 一般的ではない用語の達成基準
3.1.4 略語の達成基準
3.1.5 読解レベルの達成基準
3.1.6 発音の達成基準
3.2.5 要求による変化の達成基準
3.3.5 ヘルプの達成基準
3.3.6 エラー回避(全て)の達成基準

みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)より引用

さいごに

JIS X 8341-3/JIS X 8341-3:2016についてご理解いただけましたでしょうか?

冒頭で述べましたように、障害者差別解消法の施行などによりウェブアクセシビリティの重要性は以前よりもさらに増し、JIS X 8341-3:2016に準拠したいというお客様の要望もここ最近多くなってきました。
しかし、JIS X 8341-3:2016がどんな規格なのかをしっかり理解できている方は少ないように感じます。
今回解説させていただいた内容をしっかり理解しておきましょう。

次回は、ウェブアクセシビリティを高めるために必要な「JIS X 8341-3への対応プロセス」について解説していきます。

参考

総務省「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)」
ウェブアクセシビリティ基盤委員会

この記事を書いた人

田村 奈優太
田村 奈優太事業開発部 次長
印刷会社の営業を経て、2008年にアーティスへ入社。webディレクターとして多くの大学・病院・企業のwebサイト構築・コンサルティングに携わる。2018年より事業開発部として新規サービスの企画立案・マーケティング・UI設計・開発に従事している。
資格:Google広告認定資格・Yahoo!プロモーション広告プロフェッショナル
この記事のカテゴリ

FOLLOW US

最新の情報をお届けします