ウェブアクセシビリティに関連する用語の解説 ~概要編~
令和3年に障がい者差別解消法が改正されたために、ウェブアクセシビリティへの関心が高まっており、webサイトのリニューアルを検討されている方も多いと思います。そんな中で、ウェブアクセシビリティについて理解を深めようとしても、専門的な用語が多く、なかなか前に進めないことも少なくはないかと思います。(実際に弊社で調査した際も、一つひとつ紐解きながら進めていました…)
少しでもそんな方々のお役に立てるように、用語の解説をまとめてみました。
今回はウェブアクセシビリティについて調べ始める最初の段階、つまり概要の段階でつまずきそうな用語を解説していきます。
INDEX
そもそもウェブアクセシビリティとは?
ウェブアクセシビリティをすでに調べている方も、まだ何も知らない方も、ウェブアクセシビリティとは何かを改めて確認してみましょう。
今回解説をする用語について
先述したように、今回はウェブアクセシビリティの概要を調べた際に出てくる用語を解説していきます。以下の項目に配慮して、用語を選定しました。
用語の選定方法
- 弊社にて調査を進める中で、社内で共通理解をしておく必要のあったもの
- より深く調査を進めていく中で、基本情報として抑えておく必要のあったもの
- サイトリニューアルをお考えのご担当者様にとって、理解をしておく必要のあるもの
用語一覧
- JIS X 8341-3
- JIS X 8341-3:2016
- WCAG
- WCAG 2.0
- 適合レベル(達成等級)
- レベルA、レベルAA、レベルAAA)
- 対応度
- 配慮、一部準拠、準拠
- スクリーンリーダー
- 支援技術
- 自動チェックツール
では、順番に解説していきます。
JIS X 8341-3
JIS規格(日本産業規格)のなかでも、ウェブサイトのアクセシビリティに関する規格のことを言い、下記のようにwebに関する幅広い内容も含みます。
より詳しい内容については、こちらのブログでご紹介していますので、合わせてご確認ください。
ウェブアクセシビリティ規格「JIS X 8341-3:2016」について理解しようJIS X 8341-3:2016
2016年に改定がされたJIS規格のことで、2024年7月24日現在において最新の規格となります。
WCAG
Web Content Accessibility Guidelinesの省略表記です。
W3C(World Wide Web Consortium)という団体のなかでも、WAI(Web Accessibility Initiative)が策定したウェブアクセシビリティに関するガイドラインのことを指します。
WCAG2.0
2008年に勧告された、2.0バージョンのガイドラインのことを指しています。
先述した、JIS規格は改定を重ね、当バージョンと同一内容の規格となっています。
適合レベル(達成等級)
適合レベルは、達成したい目標度合い(レベル)のことを言います。
ウェブアクセシビリティに対応したwebサイトを制作するにあたり、どこまで対応すべきか最初に決める必要があります。その際に用いるのが、適合レベルで、制作するにあたって指標となります。
適合レベルには、以下3つのレベルがあります。その違いについて解説します。
また、各レベルには達成基準の項目が定められています。該当レベルに適合させるために必要な項目数も合わせてご案内します。
達成基準の項目内容については以下サイトよりご確認いただけます。
ウェブアクセシビリティ基盤委員会 JIS X 8341-3:2016 達成基準 早見表(レベルA & AA))
①レベルA
ウェブアクセシビリティの確保をするために最低限必要なレベルであるため、全ての達成基準を満たすことが好ましいです。達成基準の項目数は全部で25項目あります。
②レベルAA
「みんなの公共サイト運用ガイドライン」や諸外国の法律、ポリシーなどでは、このレベルに適合させることが推奨されています。達成基準の項目数は、レベルAの25項目に加え、全部で13項目あります。
③レベルAAA
発展レベルとなるため、現時点では適合させることを推奨されていません。レベルA、レベルAAの合計38項目に加え、全部で23項目の達成基準があります。
対応度
先述した適合レベルと組み合わせて使用します。「配慮」「一部準拠」「準拠」の3つに分かれており、この3つの大きな違いは「試験の実施」「試験結果の公開」を行うかどうかです。
ただし、3つともにウェブアクセシビリティ方針を作成のうえ、提示または公開の必要があることに変わりはありません。
①配慮
試験の実施や試験結果の公開有無は問いませんが、3つの適合レベルや達成基準をもとにウェブサイトを制作する必要があります。
(例)レベルAに配慮したい場合は、レベルAの達成基準のうちの1つである、「1.1.1:非テキストコンテンツ」をもとにウェブサイトを制作する必要があります。
この達成基準の大まかな内容は、図形や写真などの画像、つまり非テキストコンテンツに代替テキストを用いることです。
②一部準拠
試験の実施と公開の有無は問いません。一部準拠として公開するためには、下記のような注意が必要です。
また、準拠していないページやコンテンツを表記することは、ユーザーが困惑することを防ぐことができます。また、webサイトの運営側からも改善する際に着目がしやすいため、親切なwebサイトになるのではないかと個人的には思います。
③準拠
試験を行い、達成基準をすべて満たす必要があります。
例えばwebサイト制作中は、デザイン制作後・HTMLコーディング後・ページ作成後など、サイトを公開する前の各段階で細かく試験を行います。さらにwebサイト公開後に試験を行い、試験結果をweb上に提示します。
試験実施のガイドラインについては以下サイトよりご確認いただけます。
スクリーンリーダー
目の不自由な方や視覚に障害がある方を主な対象とし、画面に表示された内容を音声で読み上げてくれるソフトのことを指します。スクリーンリーダーで読み上げるためにも、表示する内容をテキストにすることが重要となります。
例えば、写真や図形などの画像は、どのような内容を伝えているのかを、代替テキストを用いる必要があります。
デジタル庁が公開しているこちらの動画は、スクリーンリーダーの読まれ方についてご確認いただけます。
「目が見えなくても手続ができる社会をつくる」ウェブアクセシビリティを改善する方法
スクリーンリーダーの代表的なツール
その他にもツールはありますが、上記ツールは多くのユーザーに使用されているようです。
詳しくは下記サイトよりご確認いただけます。
ウェブアクセシビリティ基盤委員会:国内のスクリーンリーダーのシェアを教えてほしい
支援技術
PCやスマートフォン、タブレットなど、あらゆる端末の操作に支援が必要なユーザーに対して、スクリーンリーダーのように操作の補助を行うソフトウェアやハードウェア、デバイスのことを指します。スクリーンリーダー以外にも下記のような支援技術があります。
- マウス操作が困難な方のための「トラックボール」や「ジョイスティック」
- 文字を読みやすくするための「画面拡大機能」や「色の反転機能」
自動チェックツール
達成基準を満たしているか、試験をする際に用い、達成の有無を自動的に確認することができるツールです。総務省から提供されている「miChecker」などが挙げられます。
ただし、確認をすることができるのは全体の2~3割となりますので、最終的には目視で確認をすることが必須となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。 ウェブアクセシビリティの概要理解を深めるために、ここで解説した内容が、少しでもお役に立てればと思います。
次回は、達成基準に出てくる用語を解説していこうと思います。
この記事を書いた人
- 大学在学中、カナダのオーロラツアー会社でレセプション業務を経験。その後、東京の旅行会社にてオペレーターやプロジェクトマネージャーなどの幅広い職種経験を経て、アーティスへUターン転職。Webディレクターとして、大学や病院サイト、コーポレートサイトのディレクション・企画業務に携わっている。
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